宏二郎 個展 「青の囁き」

沸き立つひとつの波は、大いなる海。大いなる海は、沸き立つひとつの波。そのひとつの波の煌めきは、深遠なる宇宙(青)の囁き―。

木之庄企畫では 9 月 26日から 10 月 24日まで宏二郎の個展「青の囁き」を開催いたします。

宏二郎は、内的世界と外的世界、生と死、光と影、存在と無、虚像と実像、自己と他者、人と自然、繋がりと隔たり、絵とそれに出会う人々…、様々なものの関係において曖昧さを増す「間」というどちらにも属さないところから自己の深淵をみつめ、移ろいゆく世界の普遍的な何かを探り続けている。「様々な価値観や文化は交錯し、人と人、人と自然との間合いが崩れつつある現代、私たちが今ここにいるということ、その意味や在り方を想像してみる。」と宏二郎は語る。

誰もが何かに繋がりと隔たりを感じ、そして見過ごしていく中で様々な思いが交錯する人間社会。そんな思いには頓着もせずただそこにあり、すべてを包み込む大いなる宇宙。

学説では地球が誕生して6億年経った頃、生命は海で誕生したといわれている。当時地表は強い紫外線や荷電粒子が容赦なく降り注ぎ,生命にとっては致命的な環境で生命が存在できる環境は海中だけだったという。起源はどうであれ生命の素材にあふれていた海で生命は誕生した。

私たち人類にとって海は子宮であり羊水なのではないのだろうか。自己もなく、他者もなく、正義も悪もない。深い海、際限なく青い海。青は地球、青は宇宙そのもの。海から誕生したと言われている生命は間違いなく私たちの体内に生き続け、海はただそこに在り続け、宇宙に包み込まれている、私たちは海の、地球の、宇宙の一部なのではないだろうか。

果てしなく遠い宇宙も、限りなく深い海も、私もあなたも、宏二郎が言うように、宇宙の深淵に繋がるのではないだろうか。その宇宙、そして海から届いた彼にとっての青の囁きが、皆様の心に響き渡れば幸いです。

鶴川勝一 個展 「沁」

木之庄企畫では 8 月 22日から 9 月 19日まで鶴川勝一の個展「沁」を開催いたします。

彼の作品を観たときに印象深いのは独特で鮮烈な色使いとその技法である。心が瞬間的に感じた感情の色をまるで零れてしまわないように、鶴川の手によって掬い取られ、染色され、一つの画面に集約されてゆく。

彼は常に感情に溺れているという。心は様々な感情を敏感に感じ易く、喜び、怒り、哀しみの色に溺れ、そして染まってゆくのである。彼の作品に共通する細密さ、そして色彩の豊富さは、感情の色に溺れてしまうゆえの表現方法なのでしょう。

鶴川の作品技法である「染色」と「ペン画」は、どちらの技法も共通して細密画であるが、決して拘っているわけではなく、創造力が溢れ、積み上がっていく結果である。「私は人間を描きたい。表面を削り落とした全ての人間に共通するもの」「しかし他人様の事はよくわからないので、ただひたすら鶴川勝一という人間を描いています。」と彼は語る。

現在は染色での制作をメインとしているのは、色の濃度を変えられるため、より制作時の彼のリアルな感情を表現出来る事が一番大きな要因だという。「私の作品は理想や命が「現実」によって打ち砕かれた瓦礫のようなものです。」その打ち砕かれた理想と命は風化する事なく積み上がり、彼の手により染め上げられ、形を変え「瓦礫」となりまた積み上がってゆくのだろう。

今回の展示では過去の作品と未発表の新作を展示します。作品に描かれた「瓦礫」を通して鶴川勝一という人間と彼の感情の色に染まったとき、表面を削ぎ落とした全ての人間に共通するものに出会えることでしょう。ぜひご高覧ください。

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